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発行元を書く

Entering the Imprint

  • 3,969字
  • 約10分

八月二日。根拠なしに、一つの欄を埋めた。

九時十分に、通達を読んだ。

発行元索引を整備する、とある。不明と表示される資料は索引から外す、とある。

外した資料は表題でしか探せない、とある。

表題はプナコティック文庫旧本五件だ。その言葉を先に知っている人しか、探しあてられない。

九時四十分に、問い合わせが一通来ていた。

三月のものに次いで、二通めだ。

五つを出したのはどこか、とある。発行元で探したが出てこなかった、とある。

表題から入って、第八欄を読んだ、とある。

十時から十一時まで、指針を読みなおした。

第十二条だ。刊行物に表示されているとおりに書く、とある。表示がなければ空ける、とある。

表示はある。四つの内表紙に印があり、字が九つある。

第十三条は廃刊だ。廃業はない。

二月に確かめたのと同じだ。

十一時から十二時まで、もう一度探した。

廃業と書かれたものを探した。

カードにない。索引にない。日誌にない。五つの束にない。

二月に見つけられず、それから六か月探しても、ない。

そのところが終わったという事実を、私は知っている。どこで知ったのかが、ない。

十二時半に、二月に聞いた言葉を探して読んだ。

廃業したところを現行として載せる根拠がないから、空けておいてくれ、と言われた。

その言葉は、電話で来た。

指針は、紙で来た。第十二条は、表示されているとおりに書く、とある。

電話は欄ではない。日誌に書いておいたから、日誌にはある。

私の日誌が根拠になるのかどうかは、要領にない。

一時に、二つの画面を見比べた。

外部の画面の七つめの欄が、不明だ。空けた欄が、画面では言葉になった。

合綴の表紙の八つめの欄は、空いている。紙は、空ければ空いたままだ。

同じ欄が、紙では空いていて、画面では知らないとある。

知らない、という言葉を、私は書いていない。

一時半から二時半まで、書けば何になるのかを書き出してみた。

書けば、現行の発行元索引に載る。索引は現行のものしか載せない。

索引に載れば、そのところは、いまあるところになる。

空ければ、索引から外れる。外れれば、表題を先に知っている人しか探しあてられない。

問い合わせてきた側は、表題を先に知っていた。どこで知ったのかを書く欄が、回答の様式にない。

二時四十分に、三階の人が言った言葉を探して読んだ。

ないならつくればいいじゃないか、と言われた。

そのとき、つくるのはこの部屋の仕事ではない、と書いた。

四月に、編者欄をつくった。六月に、番号のない一枚を、数えもせず、数えないこともしなかった。七月に、付記欄に一行書いた。

通達が先にあったものは、一つもない。

三時十分に、電話機を見た。

二月には電話した。担当者は、根拠がない、と二度言った。

今日訊けば、同じ言葉を聞くだろう。聞いてしまえば、書けない。

訊かなければ、聞かなかったことになる。聞かなかったことを、書けない根拠には使えない。

受話器を取らなかった。取らなかったと、日誌に書いた。

三時から四時まで、座っていた。

これまでしてきたことは、どれも、することだった。綴じて、数えて、写して、つくった。

今日しようとしているのは、書くことだ。

書くことは、この部屋の仕事だ。十九か月、それだけをしてきた。

根拠なしにしたことはあり、根拠なしに書いたことはない。

四時十分に、合綴の表紙を開いた。

八つめの欄に、鉛筆をあてた。

四時二十分に、書いた。

プナコティック文庫だ。

九字だ。欄には十字入る。一字が残った。

廃刊の年を入れる括弧は、使わなかった。廃刊ではない。

四時半に、画面に入れた。

七つめの欄に九字を入れ、保存した。

画面はそのままだ。不明が、そのままある。

夜間の一括処理のあとで変わる、とある。

発行元索引は週ごとに更新される、とある。次の更新は八月九日だ。

五時に、右側の資料を開いた。

四百三十二章だ。増えた章の日付は、九八年八月三十一日だ。

私の日誌も、今日で四百三十二章めだ。

記入者一覧は四行だ。

五時十分に、箱を開けた。

七つだ。跡は六つだ。百六十日めだ。

五時二十分に、六つめの欄を見た。

千九百四十七だ。

五時二十五分に、照会記録を出した。

一揃いの行が、昨日八度開かれた。英字八文字が五つだ。

七月のはじめには、一日五度だった。

問い合わせてきた側のアカウントを、照会記録から探した。英字八文字だ。これまでその行を開いてきたものと、同じ表記だ。

同じ表記が一人なのかどうかは、書かれていない。

五時半に、回答を書いた。

発行元はプナコティック文庫だ、と書いた。

廃業したとは書かなかった。書く欄がなく、根拠もない。

回答の欄がないので、これも出ていけば残らない。

五時四十分に、書いた欄をもう一度見た。

九字がある。表示されているとおりだ。

印は、そのところがあったという事実しか書かない。二月に、そう書いた。

欄が訊いているのは、いまだ。二月に、そうも書いた。

表示されているとおりに書いたのだから、あったということを書いた。

書かれた場所は、いまを訊く欄だ。

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