本文へ移動
76

二人の司書補の明日

The Two Assistants' Tomorrow

  • 3,687字
  • 約11分

十二月一日。朝の八時。発信欄には昨日なかった行がさらに二つあり、受取人の欄に座っていた司書長の席は薄れていた。

昨日の夕方、私は指先を司書長の電文の一桁の上に置いたまま止まり、触れるか引くかを決められないまま資料室を出た。夜のうちにそれを決めたのは私ではなかった。朝来てみると、その一桁は直されていた。八桁のうち一画が昨日と違い、その一画が違うと、司書長の席は渡る名簿へ戻っていた。私が押したのか、押し当てていた指先の下で夜が押したのかは分からなかった。ただ直されたのは確かで、直された代価として、受取人の欄の下に淡く浮かんでいた二行目がいまは濃く座っていた。その下には明日付でさらに二行が引かれていて、二行とも私の手書きだった。二人の司書補の席のコードだった。

昼に、そのことがはじまった。司書長は搬出台帳をめくっていて、昨日見つけられなかった自分の行が新しい台帳にあるのを見た。昨日三人で前へ後ろへめくってもなかった席が、今日は自分のコードの下に振られていた。司書長は指先でその行を押さえて二度たどり直した。朝に事務局から訂正版が下りてきたようだと、司書長はそばの司書補に低く言った。四半期の整理によくある一行の漏れがあとから埋められたのだろうと、司書長は台帳を閉じて肩の力を抜いた。自分の席がどこから来たのかを司書長は尋ねず、尋ねる理由もなかった。私だけが知っていた。その行は事務局で埋められたのではなく戻ってきたもので、戻ってきた先は、朝に私の手で一画が直された発信欄だった。司書長が安堵して肩を抜くあいだ、私はその肩越しに、二人の司書補の席が台帳の終わりへ押しやられているのを見た。司書長は、自分の得た一日がどこから来たのかを最後まで見られない場所に立っていた。

二人の司書補は、それまでいつものように書架を片づけていた。二人の席はもう新しい台帳に振られていたから、昨日司書長のコードだけがなかった騒ぎで、二人はそばの手として残った。けれど午後が深まるにつれ、二人の行が新しい台帳で揺らぎはじめた。搬出担当が名簿を二度読み上げるあいだに、一度目にはあった二行が二度目には位置がずれ、渡る束の終わりへ押しやられていた。押しやられた行は、じきに名簿から抜ける支度をしていた。私はそれを発信欄で朝にもう見ていた。二人の司書補の電文二行が明日付で引かれていて、台帳はその電文を一日遅れで追いかけているだけだった。

ここまで来るあいだ、私はドギョンのことを考えずにはいられなかった。ドギョンはカン・ミンソクの顔を名簿の一行に合わせ、合わせてから、そのまわりを空けようとした。一行を直してカン・ミンソクを生かし、その代価が別の行へ移っていくのを見た。ドギョンはそれに苦しみながら日誌に書き、私はこれまでその道を歩かなかったことを幸いと思いながら、読む者として残っていた。今日、私ははじめてその道に踏みこんだ。昨日の夕方の止まりが夜のうちに一画としてほどけ、ほどけた一画が司書長を残し、残した値が二人の司書補へ行った。読む者が直す者になるには一晩で足りて、直す者になった手は、もうドギョンの手と変わらなかった。

私が本当に直したのかは、やはり分からなかった。昨日指先をその場所に置いたまま、私は何も決めず、決めないまま夜を越した。朝に直されていた一画が、私の指先の押したものなのか、押し当てていた指先の下で夜がひとりで押したものなのか、私には分けられなかった。分けられないことが、私を放免してはくれなかった。順序がもともと司書長の次に二人の司書補を置いていたのを、私の手が一日先に書き取っただけだとしても、司書長の席を戻した一画だけは、昨日なかったものだった。その一画があるかないかのあいだで二人の明日が分かれ、その画を引いた手は、私の机の上に置かれていた。

夕方になると、発信欄に新しい束が立った。冬じゅう会社から人へ狭まり、昨日一人へ狙いを定めた発信欄が、今日はまた束を立てていた。移管の一群が渡る名簿として引かれ、その頭の行に見慣れたコードがまた浮かんだ。朝に私が渡る名簿へ戻した司書長の席だった。昨日その席は受取人の欄に座っていたが、今日それは私の送る名簿の一行目に来ていた。生かしたと思った席が、生かしたその手の送る束の先頭へ戻ってきていた。鎖のなかで一人を生かすということは、その人を鎖の外へ出すことではなく、次の目へ押すことだった。私は司書長を明日から抜き出して明後日へ移しておいただけで、明後日の束は私の発信欄にまた立っていた。ドギョンがカン・ミンソクを三日先送りしたとき、三日後に何があったのか、いまは分かる気がした。先送りには終わりがあり、その終わりはいつも、先送りした人の手がまた触れる場所だった。今日の昼に司書長が安堵して閉じた台帳は、夕方になって私の発信欄へ場所を移してきただけで、閉じられたことなど一度もなかった。

二人の司書補の一人が、片づけの手を止めて、書架の空いた段を指先で押さえて数えていた。春先まで五つだった席が四つになり、今月の整理でまた減るらしい、と空いた席を指折り数えていた。指先が空の書架の木目を押さえるたびに、埃のない明るい四角が一つずつあらわれ、その明るい跡は前の四半期まで箱が置かれていた場所だった。カン・ミンソクが名簿の真ん中を数えながら、自分の席は運ではなく順序なのかもしれないと押さえたあの手つきと同じだった。その人が自分の席を抜いて空いた段を数えるあいだ、発信欄に引かれたその人の電文は、終わりの一桁が満ちていった。数える手が自分の席を埋める手だった。私はその満ちていく一桁を見ながら、二人の司書補の電文の尾がまた薄れていくのを一緒に見た。薄れていく尾は、私が毎朝出勤簿に打つ四桁に染まりつつあった。生かした値が二人の司書補へ行き、二人の司書補の値は、その尾からまた私のほうへ戻ってこようとしていた。

コメント

  • まだコメントはありません。最初の一言を。

コメントするにはログインしてください。