レンは、ラヴクラフトが「猟犬」(一九二二年)で屍を食らう教団の住む中央アジアの高原として初めて記し、のちに「未知なるカダスを夢に求めて」では幻夢境の北の果てへと書き移した。どちらが正しいのかは整理されないままだ。蹄の割れた足を持つレンの民と、彼らと長く争ってきた巨大な蜘蛛たちがそこに棲む。先史の僧院のひとつには、名を語ってはならない大祭司がひとり座している。
この高原が長く使われてきたのは、怪物よりも位置のためだ。レンは地図に打たれることを拒む。ある物語では歩いて辿り着け、別の物語では眠らなければ辿り着けない。在り処の定まらない場所は、行った者の記録のなかにしか存在しない——そしてその記録どうしが食い違う。