九尾の狐(クミホ)は、千年を生きた狐が人に化けて人間の肝を狙うという伝承で、13世紀の『三国遺事』のころから韓国の記録に登場する。中国の狐仙と日本の狐信仰を共有する東アジアのモチーフが、韓国で分かれ出た分枝だ。美しい女に変身して人に近づく姿は、もっとも近い存在が実は人間ではないかもしれないという擬態の恐怖をたたえている。人間になろうとする渇望と、その渇望が招く破局が物語の中心にある。