辟邪は、獅子の体に翼を備え、龍に似た頭を持つ中国のキメラ型神獣である。同じ姿で一本角の天禄(天祿)と対をなし、三世紀の注釈家・孟康は、一角を天禄、二角を辟邪として分けた。
名はそのまま「邪を辟ける」を意味する。唐代の注釈家・顔師古は、辟邪が悪鬼や邪気を防ぐと記した。後漢のころから墓へ続く神道(しんどう)に巨大な石像として据えられ、死者を守り、墓の威厳を示す守護獣の役を担った。
翼を持つ猛獣の姿は、西アジア・中央アジアの原型が交易路を通じて伝わり定着したものとみられる。天禄と辟邪は武勇と辟邪の象徴として、軍旗や印章、鐘や帯の留め具にまで刻まれ、後世には財を呼ぶ吉祥の獣としても受け入れられた。南京一帯には、最もよく保存された巨大な辟邪の石像が残る。